地盤調査の報告書を受け取ったものの、「速度」「周波数」といった見慣れない言葉が並んでいて、どこを見ればよいのか分からない——表面波探査法の報告書では、よくいただくご相談です。
結論からお伝えすると、表面波探査の報告書は、「地盤の硬さを波の速さで測り、それを支持力(どれだけの重さを支えられるか)に置き換えたもの」です。見る順番さえ押さえれば、難しいものではありません。
この記事では、表面波探査法で地盤調査を行っている私たちヤマト産業が、実際に作成した報告書のページを1枚ずつ使いながら、どこを見れば何が分かるのかを解説します。
なお、地盤調査でいちばん多いスクリューウエイト貫入試験(SWS試験)の報告書の見方は、こちらの記事で解説しています。お手元の報告書がどちらの方法なのか、表紙の「調査方法」の欄でご確認ください。
【目次】
Toggleそもそも表面波探査法とは
表面波探査法は、地面を小さくゆらし、そのゆれが伝わる速さで地盤の硬さを調べる方法です。
ゆれ(波)は、硬いものの中では速く、軟らかいものの中ではゆっくり伝わります。起振機という機械で周波数を変えながら地面をゆらすと、周波数によって波の届く深さが変わるため、浅いところから深いところまで、硬さの分布を細かく読み取ることができます。
- 地面に穴をあけない非破壊の調査です
- 検出器の間隔(1〜1.5m程度)の範囲を測るため、「点」ではなく「面」に近い調査です
- 硬い地盤・軟らかい地盤の境目(地層の境界)が分かります
- 建物を建てたあと、どのくらい沈むかの沈下量予測ができます
この方法は、国土交通省の告示(平成13年国土交通省告示第1113号)で定められた地盤調査の方法に該当します。また、一般財団法人先端建設技術センターの建設技術審査証明を1997年に取得し、その後も更新が重ねられている技術です。

報告書は、波の「速さ」を読むのがコツです。
実際のページで、順番に見ていきましょう。
今回ご紹介する報告書について
ここからご紹介するのは、大阪府東大阪市のある現場(木造2階建ての新築予定地)で、私たちが作成した実際の報告書です。ご依頼主のお名前や番地などは載せていません。
先に結論をお伝えすると、この現場は「液状化の可能性が高い」とされる土地でしたが、調査の結果、地盤改良工事は不要と判定されました。なぜそう言えるのかを、報告書のページを追いながら見ていきます。
まず目次で、全体の流れをつかむ

表面波探査の報告書は、おおむねこの順番で並んでいます。
| 位置 | 内容 | ここで分かること |
|---|---|---|
| 巻頭 | 基礎地盤提案書・解析条件 | 調査の結論(基礎の形式)と、判定の前提条件 |
| 巻頭 | 技術審査証明書・調査員認定書 | 調査方法と調査員の資格の証明 |
| 巻頭 | 調査位置図 | もとの地形と、液状化の可能性 |
| 1〜3 | 調査概要・調査方法・調査配置図・敷地状況 | どこを、どんな方法で測ったか。土地の生い立ち |
| 4 | 支持力計算結果・支持力地層区分断面図 | 深さごとの支持力と、地層のつながり |
| 5 | 沈下量計算・層区分グラフ | 予想される沈下量と傾き、測定の元データ |
| 6 | 現場写真 | 調査した場所と周りの様子 |
基礎地盤提案書——最初に見るのはここ

報告書を開いたら、まずこのページを見てください。調査の結論がまとまっています。
- 提案条件 — 木造2階建てで、必要な地耐力(支持力)は30kN/㎡。この現場は設計者からの指定で30kN/㎡としています。指定がない場合、私たちは木造2階建てまでは20kN/㎡、3階建ては30kN/㎡で判定しています
- 基礎・地盤提案 — 第1提案は「床付け転圧、ベタ基礎」。つまり、地盤改良をせず、地面をよく締め固めてからベタ基礎をつくれば大丈夫という結論です
- 対策方法 — 根切り(基礎の深さまで掘ること)のあと、振動ローラーなどで水をまきながら地面を締め固める、異物が出たら取り除いて砕石で埋め戻す、といった具体的な施工の手順まで書かれています
提案が「第1提案」「第2提案」と2つ書かれることもありますが、提案に優劣の差はありません。費用や工期で選んでいただけます。
なお、10kN/㎡はおよそ1㎡あたり1トンに相当します。30kN/㎡なら、1㎡あたり約3トンの重さを支えられる地盤が必要、ということです。
解析条件——判定の前提を確かめる

提案書の次にあるのが、解析条件のページです。ここには、結論を出すうえでの前提がまとめてあります。
- 判定深度 — 設計の地面から300mm下(基礎の底の深さ)から下で判定しています
- 予想最大傾き — 0.3/1000。後ほど沈下量のところで詳しく見ます
- 造成経過年数 — 長い。造成から年月がたち、地盤が落ち着いているということです
- 支持力のバラツキ — あり。この点も、後ほどグラフで確かめます
- 建物にかかる不安要素 — 礫(小石)。施工のときに異物が出たら取り除くよう、提案書にも書かれています
調査位置図——土地の「生い立ち」が分かるページ

地味なページですが、私たちがとても大切にしているページです。
左の地形図は、国のハザードマップポータルサイトから引用したもので、土地のもとの地形が色分けされています。この現場は「氾濫平野・海岸平野」、つまり川があふれたり海だったりした低い平地にあたります。表層の地質は「砂・シルト及び泥」です。
右の液状化マップでは、この地点の液状化の可能性は「高い」とされています。
ここで大切なのは、液状化の可能性と、ふだんの家の重さを支える力(支持力)は別の話だということです。液状化は大きな地震のときに起きる現象で、ふだんの支持力が十分でも起こり得ます。そのため報告書では、液状化への備えとして「基礎に十分な剛性と強度をもたせる(べた基礎、布基礎)」ことを勧めています。今回の提案がベタ基礎になっているのは、この点とも合っています。
土地の生い立ちは、家が建ったあとの床下の湿気やシロアリの出やすさにも関わります。詳しくはこちらの記事で解説しています。
調査配置図と敷地の状況——どこを、どんな土地で測ったか

①〜⑤の丸数字が、表面波探査を行った場所です。建物が建つ範囲の四隅と中央の5か所で測ることで、敷地の中で硬さに偏りがないかを確かめます。
四角で囲まれた「−60」「−80」などの数字は、基準にした点(この現場では敷地の南東側にあるマンホールの中心)からの高さで、単位はmmです。敷地にどれくらいの高低差があるかも、ここで分かります。

この表には、現地で目で見て確認したことが記録されています。この現場では、
- 今は更地で、以前は宅地(建物の取り壊し跡地)
- 地表の土はシルト質土で、礫(小石)混じり。乾いていて硬い
- 擁壁、古い家屋、井戸はなし
でした。建物の取り壊し跡地では、古い基礎のがらや埋め戻した土が残っていることがあります。そのため私たちは、表面波探査とあわせて突き棒(直径18mmほどの鉄の棒)を地面に突き刺し、地表のすぐ近くの状態も確かめています。
層区分グラフ(区間速度)——波の速さで硬さを読む
いよいよグラフです。グラフには、主に3つの記号が出てきます。
| 記号 | 意味 | 読み方のポイント |
|---|---|---|
| Vr | 速度(表面波の伝わる速さ) | 数字が大きいほど硬い地盤。小さいほど軟らかい地盤 |
| D | 深度(深さ) | グラフの縦軸。上が浅く、下が深い |
| f | 周波数(1秒間にゆれる回数) | 周波数を変えることで、測る深さを変えている |

5本のグラフが、①〜⑤の5か所の結果です。横に引かれた線は、地層の境目を5か所でつないだものです。
1か所を拡大して見てみましょう。

各グラフの左側に、深さ(D)と、その深さの層の速さ(Vr)が数字で並んでいます。たとえば測点No-1では、
- 深さ0.15mで約113m/s
- 深さ0.95mで約107m/s
- 深さ2.07mで約87m/s
と、浅いところが比較的硬く、深くなるにつれて少しずつ軟らかくなっていく地盤だと読めます。右側のグラフでは、点や線が右にあるほど硬いと見てください。
5か所を見比べると、表面近くの速さは測点No-3がいちばん大きく(約131m/s)、ほかの測点はそれより小さな値です。解析条件に「支持力のバラツキあり」とあったのは、このような場所による違いのことです。
支持力計算結果——必要な支持力を満たしているか
速度の数字だけでは、「家を建てて大丈夫か」は判断できません。そこで報告書では、速度を支持力(地盤が支えられる力)に換算しています。

式は難しく見えますが、流れはシンプルです。
- 測った表面波の速さ(Vr)から、地盤の硬さを表す別の速さ(S波速度 Vs)を求めます(Vs=Vr÷0.954)
- そこから、地盤調査でよく使われる「N値」に換算します(N=(Vs÷80)の3乗)
- 土の種類(粘りのある土か、砂の土か)に応じて、国の告示の式で支持力を計算します
報告書には、この計算に使った式がすべて書かれています。「どの式で計算したのか」が報告書の中で確かめられることも、信頼できる報告書の条件です。
そして、計算した結果がこちらです。

縦に並んだ箱の中の数字が、その深さの支持力(kN/㎡)です。必要な支持力(この現場では30kN/㎡)を下回る範囲があれば、網かけで示されます。
この現場では、
- 基礎の底になる深さ(300mm)のすぐ下で、63〜95kN/㎡
- 深くなるにつれて数字は小さくなるものの、いちばん小さいところでも30kN/㎡を下回っていない
という結果でした。網かけの範囲はありません。
いちばん下の「特記」も必ず読んでください。調査員の所見が文章でまとめてあります。この現場では、「表層部から地耐力30kN/㎡を満たした安定した地盤が続いている」一方で、「地耐力にバラツキが見られ、バランスの悪い地盤」とも書かれています。だからこそ、提案書で地面をよく締め固めて、表層の地耐力を均一にしてからベタ基礎をつくるよう求めているのです。
基礎の形式は、この支持力(地盤の長期許容応力度)をもとに、国の告示(平成12年建設省告示第1347号)で次のように目安が定められています。
| 地盤の長期許容応力度 | 選べる基礎の形式 |
|---|---|
| 20kN/㎡未満 | 基礎ぐい(杭) |
| 20kN/㎡以上30kN/㎡未満 | 基礎ぐい、またはべた基礎 |
| 30kN/㎡以上 | 基礎ぐい、べた基礎、または布基礎 |
支持力地層区分断面図——5か所をつないで見る

5か所の支持力を並べて、同じ地層を線でつないだ図です。線が大きく傾いていたり、ある測点だけ軟らかい層が厚かったりすると、家が傾いて沈む原因になります。
この現場では、1層目から4層目までの境目が、5か所でほぼ同じ深さに並んでいます。地層が大きく傾いていないことが、この図から読み取れます。
報告書の巻末には、この支持力をグラフにした「層区分グラフ(支持力換算)」も付いています。

沈下量計算——家がどれだけ沈み、傾くか
支持力が足りていても、建てたあとに家がどれだけ沈むかは別の問題です。表面波探査では、沈下量の予測ができるのが大きな特長です。
報告書では、2種類の沈下を計算しています。
- 即時沈下 — 家の重さがかかった直後に起きる、地盤の変形です
- 圧密沈下 — 時間をかけて、土の中の水が抜けながらゆっくり進む沈下です。田んぼの跡など、水を多く含む軟らかい土で問題になりやすい沈下です

上の表を見ると、この現場の沈下量の合計は5か所とも18〜20mmでした。
ここで大切なのは、沈下量の大きさよりも沈み方の差です。家全体が同じだけ沈むのであれば、大きな問題にはなりにくいのです。怖いのは、場所によって沈み方が違い、家が片側に傾く不同沈下です。
下の「建物傾き計算」の表は、2つの測点の沈下量の差を、測点どうしの距離で割って傾きを出したものです。たとえば測点③と④の間は、沈下量の差が2mm、距離が7,800mmなので、傾きは約0.3/1000になります。
これを、国の告示(平成12年建設省告示第1653号)の目安と比べます。ここでは、1000分の6以上の傾きが見られる場合、構造上の主要な部分に欠陥がある可能性が高いとされています。この現場の予想最大傾きは0.3/1000で、目安の20分の1です。傾きの心配は小さいと判断できます。
この報告書から分かったこと
ここまでの内容をまとめると、この現場は次のような地盤でした。
- 土地は「氾濫平野」で、液状化の可能性は高い
- しかし、ふだんの家の重さを支える力(支持力)は、どの深さでも必要な30kN/㎡を満たしている
- 地層は傾いておらず、予想される傾きは0.3/1000と小さい
- ただし場所によって硬さにばらつきがあるので、地面をよく締め固めて均一にする
その結果が、「地盤改良なし。床付け転圧のうえ、ベタ基礎」という提案です。液状化マップの色だけを見れば不安になる土地でも、実際に測ってみると、改良工事は不要という結論になることがあります。

地図の色だけで、あわてなくて大丈夫です。
実際に測ってみると、分かることがたくさんあります。
よくいただくご質問
「改良が必要」と書かれていたらどうすればよいですか
まず、なぜ必要なのかを報告書で確認してください。支持力が足りないのか(支持力計算結果の網かけ)、傾きが大きいのか(建物傾き計算)。理由が分かれば、必要な対策の大きさも見えてきます。
結果に納得できない場合は、別の会社や別の方法で確認するセカンドオピニオンという考え方もあります。
杭が必要と判定されたら、追加の調査は必要ですか
杭の設計には、深さごとの細かなデータが必要になるため、SWS試験などで改めて調査を行うのが一般的です。私たちは、現地で調査を進める中で杭が必要になりそうだと分かった場合、その時点で相談させていただき、ご負担が二重にならないよう対応しています。
SWS試験と結果が違うことはありますか
あります。SWS試験はスクリューを地中にねじ込んで、その場所の硬さを点で測る方法、表面波探査は波で面に近い範囲を測る方法で、得意なことが違うためです。どちらが正しいということではなく、向き不向きがあります。詳しくはこちらの記事で比べています。
家を建てたあと、近所で工事が始まったら
報告書の注意事項にも書いていますが、近くで大きな掘削工事や盛土工事が行われると、地下水位や地盤が変わることがあります。その場合は、工事が始まる前に、工事の発注者や施工会社に家屋調査(建物の傾きや外観を記録しておく調査)を依頼しておくと安心です。
調査する会社が「改良工事をしない」ことの意味
報告書を読むとき、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。それは、誰が調査し、誰が判定しているかです。
私たちヤマト産業は、地盤調査を行いますが、地盤改良工事は行っていません。調査の結果で工事の受注が決まる立場ではないため、「必要な対策は必要、不要なものは不要」と、データのとおりにお伝えできます。今回の現場のように、改良が不要であれば、そのとおりにお伝えします。
また、調査のあとの解析と基礎の考察は、地盤保証会社に依頼しています。調査員の判断だけで結論を出さず、第三者の目を通すことで、保証を発行したあとにトラブルが起きないようにするためです。調査は、ビイック株式会社が発行する表面波探査法の調査員認定を受けたスタッフが行っています。

分からない数字があれば、そのままにしないでください。
報告書を見ながら、一緒に確認しましょう。
家が建ったあとは——地盤と床下はつながっています
地盤調査は、家を建てる前の一度きりのものと思われがちです。しかし、地盤の状態は、建ったあとの家にもサインとして現れます。
たとえば、基礎のひび割れの多くは、地盤の動きが原因です。そして、そのひび割れは湿気やシロアリの入り口にもなります。私たちが地盤調査とシロアリ防除の両方を行っているのは、この2つが基礎を通じてつながっているからです。
まとめ——報告書を読む順番
表面波探査の報告書は、次の順番で読むと分かりやすくなります。
- 巻頭の「基礎地盤提案書」で結論を確認する
- 「調査位置図」と「敷地状況」で、土地の生い立ちを知る
- 「層区分グラフ(区間速度)」で、深さごとの硬さを見る
- 「支持力計算結果」で、必要な支持力を満たしているか、特記に何が書かれているかを見る
- 「沈下量計算」で、予想最大傾きが1000分の6の目安に対してどうかを見る
もっと詳しく知りたい方は、表面波探査法の開発元であるビイック株式会社の地盤調査報告書の読み方もあわせてご覧ください。
報告書の内容が分からない、結果に納得がいかないというときは、お気軽にご相談ください。地盤調査のご依頼はもちろん、お手元の報告書の読み方についてのご質問もお受けしています。
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