住宅には、多くの木材が使われています。
住宅の木材にとって、きわめて大きな脅威となるものに「シロアリ」と「木材腐朽菌」が挙げられます。
これらは、いずれも木材の主要成分を分解して栄養源としていることから、著しい強度低下を招く恐れがあります。
また、これらの影響が重要構造にまで及ぶと、建物の寿命を縮める要因にもなってしまうことは十分な注意が必要です。
そこで今回は、「木材腐朽菌」にフォーカスし、その種類や対策などについて徹底解説いたします。
【目次】
Toggleそもそも木材腐朽菌とは?
木材腐朽菌とは、木材の主要成分を分解することにより、いわゆる「腐れ」を引き起こす菌類のことをいいます。
まず、木材の主要成分は、大きく以下の3つで構成されています。
- セルロース
- ヘミセルロース
- リグニン
木材腐朽菌は、木材の内部に侵入すると、これら主要成分を分解し、栄養源とすることで成長します。
その結果、木材の物理的な性質は大きく変化し、ボロボロに腐っていくわけです。
腐れが生じた木材は、比較的早い段階で強度が低下し、柱や梁、筋交いなどの重要構造にまで影響が及ぶと、万が一の地震発生時には揺れに耐えられなくなっているかもしれません。
つまり、木材腐朽菌とは、木材に深刻な劣化をもたらすきわめて危険な存在なのです。
ちなみに、シロアリは、体内にいるバクテリアなどの力を借り、木材に含まれる「セルロース」を分解して栄養源とし、木材腐朽菌同様に著しい強度低下をもたらします。
その他シロアリのエサとするものに関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
木材腐朽菌が好む環境について
木材腐朽菌は、好む環境に一定の特徴があります。
そのため、木材腐朽菌の影響から建物を守るには、そのような環境をつくらないことが対策として機能することになります。
まず、木材腐朽菌は、生物であることから、生育するうえで「栄養」「温度」「水分」「酸素」の4つの要素が不可欠です。
これら4つの要素について、木材腐朽菌が好む環境を解説いたします。
栄養
木材腐朽菌が栄養とするのは、木材の主要成分である「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」です。
木材腐朽菌の胞子は、空気中に常時漂っており、付着した木材が生育に適していると発芽して内部へと入り込みます。
そして、「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」などを分解しながら栄養とし、成長します。
温度
木材腐朽菌は、適度な温度の下で生育します。
木材腐朽菌の種類によって好む温度環境は異なりますが、大きく24℃以下を好む「好低温菌」、24~32℃を好む「中温菌」、32℃以上を好む「好高温菌」に分けられます。
以上のように、木材腐朽菌が好む温度とは、わたしたち人間にとっても、適温とされる温度と重なることが大きな特徴です。
水分
木材腐朽菌は、その他の生物もそうであるように、水分がないと生育できません。
木材に含まれる水分の割合を示す「含水率」は通常で15%程度を示しますが、木材腐朽菌は20%を超える環境で発生しやすく、また、30%を超えると活発になるといわれています。
一方で、20%を下回る環境では、腐れが生じることは非常に少なくなります。
酸素
木材腐朽菌は、わたしたち人間と同様に、生育するために酸素が必要です。
そのため、木材が完全に水に浸かった状態では、腐れが生じることはありません。
木材腐朽菌の種類について
木材腐朽菌は、種類によって特徴が異なります。 その種類とは大きく以下の3つに分けられます。
- 白色腐朽菌
- 褐色腐朽菌
- 軟腐朽菌
白色腐朽菌
白色腐朽菌とは、腐れが生じたとき、木材を白色に変色させる木材腐朽菌のことをいい、シイタケやナメコ、エノキタケなどがその仲間となります。
サクラなど広葉樹を好むものが多く、症状が進行すると木材に豆粒ほどの穴が多く見られることがおもな特徴です。
褐色腐朽菌
褐色腐朽菌とは、腐れが生じたとき、木材を茶褐色に変色させる木材腐朽菌のことをいい、ナミダタケやサルノコシカケなどがその仲間となります。
スギなど針葉樹を好むものが多く、症状が進行すると表面に亀裂が生じるとともに手でつかむと粉状になることがおもな特徴です。
軟腐朽菌
軟腐朽菌とは、腐れが生じたとき、木材を黒褐色に、そして表面を柔らかく変化させる木材腐朽菌のことをいいます。
白色腐朽菌や褐色腐朽菌には活動できない、含水率が100%以上の木材でも腐朽できることがおもな特徴です。
木材腐朽菌の対策について
木材腐朽菌が発生したまま放置すると、建物の耐久性を著しく低下させる恐れがあります。
そのため、建物の長寿命化を図るには、木材腐朽菌への適切な対策を施さなくてはなりません。
適切な対策とは、木材腐朽菌にとって都合のよい環境をつくらないことです。
木材腐朽菌が生育するには、「栄養」「温度」「水分」「酸素」の4つの要素が不可欠となります。
つまり、4つの要素のうち1つでも断つことができれば、木材腐朽菌は生きられないということです。
しかし、これらのうち唯一コントロールが可能となるのは「水分」しかありません。
というのも、住宅内には「栄養」となる木材が豊富にあること、木材腐朽菌の好む「温度」は人間にとって適温とされる温度と重なること、そして空気中には当然に「酸素」が存在することがその理由です。
そのため、いかに「水分」を供給しない環境をつくることが重要なポイントとなります。
木材腐朽菌が発生しやすい場所
住宅において、木材腐朽菌が発生しやすいのは、湿気の影響を受けることが多い場所となります。
例えば、以下のような場所です。
- 小屋裏
- 壁内
- 床下
小屋裏
小屋裏で湿気が生じる原因といえば、雨漏りが考えられます。
雨漏りは、屋根材の破損や劣化などが生じることで、起こります。
雨漏りは、時間をかけて少しずつ進行することも多く、気付いたときには広範囲に腐っていたということも少なくありません。
そのため、定期的な点検とメンテナンスを行うことにより、雨漏りにいち早く気づくことが重要になります。
壁内
壁内で湿気が生じる原因といえば、雨漏りや結露が考えられます。
雨漏りは、屋根からだけでなく、外壁やサッシ周辺のコーキング切れなどによって起こることがあります。
また、結露は、窓ガラスなど表面に水滴が現れる「表面結露」だけでなく、壁内で生じる「内部結露」のケースがあることは注意が必要です。
結露は、おもに湿度が高く、温度差がある場所で発生します。
その場所が壁内であれば、そこで発生するわけですが、基本的に目視では確認することが難しく、気付いたときには広範囲に腐っていたということも少なくありません。
そのため、結露が起こりにくい環境づくりが重要になります。
結露対策は、建物の断熱性能にも大きく左右される部分ではありますが、室内の湿度を上げ過ぎないこと、こまめに換気して湿気を外部へ排出することなどが有効な方法です。
床下
床下は、建物内でもとくに湿気が生じやすい場所であり、そのため木材腐朽菌が多く見られる場所のひとつです。
湿気の原因にはさまざまありますが、おもに以下のようなことが挙げられます。
- 床下の換気能力が十分でない
- 土壌から発生する水分量が多い
- 結露が発生している
- 水漏れが生じている
なお、床下の湿気に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
木材腐朽菌の対策は床下環境を整えることが重要
住宅の床下は、とくに湿気の影響を受けやすい場所となります。
その結果、木材腐朽菌やシロアリなどの被害を受けやすくなってしまい、建物の寿命を縮めてしまうことにもなりかねません。
よって、床下の環境を整えることは、建物を守るためにも、きわめて重要なことなのです。
床下の環境を整える方法には、大きく以下の2つの方法があります。
- 床下換気
- 床下調湿
床下換気
床下換気とは、床下換気扇を設置し、湿気を多く含んだ空気を強制的に外部へ排出することにより、空気の入れ替えを行う方法です。
床下調湿
床下調湿とは、調湿マットや防湿シートなどを敷設することで、土壌から発生する湿気を防ぐ方法です。
まとめ
木材腐朽菌は、シロアリと同様に、住宅にとって非常に大きなリスクとなり得ます。
そのため、適切な対策を講じることが重要になります。
適切な対策とは、建物内の湿気をコントロールしていくことです。
とくに床下の湿気対策は重要であり、いかに環境を整えられるかという点は非常に重要なポイントとなります。
ヤマト産業では、床下の換気工事や調湿工事も行っています。
建物内の腐れやシロアリの被害が気になっている方は、お気軽にご相談ください。