家を建てる際、地盤調査を行い、その結果からどのような基礎とするのか検討することになります。
地盤調査が行われた後には、「地盤調査報告書」が作成され、どのような結果だったのか確認することが可能となります。
しかし、一般の人にとっては、「地盤調査報告書」を見て、その内容を理解するのは簡単ではないかもしれません。
そこで今回は、地盤調査結果の見方について、おもに地盤調査の後に作成される「地盤調査報告書」の確認ポイントを徹底解説いたします。
【目次】
Toggle地盤調査の主流はスクリューウエイト貫入試験
地盤調査には、特徴が異なるいくつかの方法があります。
代表的な地盤調査の方法となるのは、以下の通りです。
これらのうち、住宅の新築工事で最も多く行われているのは「スクリューウエイト貫入試験」です。
「スクリューウエイト貫入試験」とは、先端がキリ状になった鉄の棒(ロッド)を地盤へ突き刺し、その沈み方によって地盤の硬さを判断します。
なお、地盤調査の方法に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
スクリューウエイト貫入試験の方法について
スクリューウエイト貫入試験は、一般的に、敷地の四隅と中央の5か所について試験を行います。
ロッドの先端に取り付けたスクリューポイントを地面に突き立て、クランプにおもりを載せたときの沈み込みやハンドルを回転させて25cm貫入するまでの回転数などで強度を算出します。
弱い地盤を示す自沈層
おもりは、最大100kgまで段階的に重くしながらロッドを地盤へ貫入させていきます。
このとき、おもりの荷重だけで沈んでいく層のことを「自沈層」といい、弱い地盤であると判断します。
強い地盤を示す回転層
100kgのおもりでも沈まない場合は、ハンドルを回してさらにロッドを貫入させ、25cm貫入するまでに要した半回転数を記録します。
このとき、ハンドルの回転によって貫入させる層を「回転層」といい、強い地盤であると判断します。
深さは概ね10m
スクリューウエイト貫入試験の調査は、概ね10mまで行われることが一般的なケースです。
おもに、スクリューポイントが硬い層に到達して貫入量が5cmあたりの半回転数が50回以上となる場合やハンドルの反発力が著しく大きくなる場合、その他障害物に突き当って空転する場合には測定を終了します。
地盤調査結果の見方とは
地盤調査が行われたら、「地盤調査報告書」により、詳しい結果を確認できます。
「地盤調査報告書」をどのように見ればよいのか、住宅新築工事で最も多く行われる地盤調査であるスクリューウエイト貫入試験で作成されるものについて解説いたします。
地盤調査報告書の各項目
地盤調査報告書には多くの項目があります。
会社によって書式は異なりますが、記載されている項目はほとんど同じです。
地盤調査報告書にあるおもな項目について、簡単に解説いたします。
荷重Wsw(kN)
ロッドを25cm沈めるために載せたおもりの荷重を示しています。
おもりは、5kg、15kg、25kg、50kg、75kg、100kgがあり、最も大きい100kgの表記は1.00kNとなります。
また、荷重Wsw(kN)は、右側にグラフとしても表示されています。
回転(Na)
ロッドを25cm貫入させるために要した半回転数を示しています。
おもりの荷重だけで沈む場合の表記は0となります。
貫入深D(m)
地表からの深さを示しています。
スクリューポイントがどれだけ貫入したのかということも確認できます。
1m当りの半回転数(Nsw)
回転(Na)を1mあたりの深さに換算したものを示しています。
また、1m当りの半回転数(Nsw)は、右側にグラフとしても表示されています。
音・感触
ロッドが沈んだときの音や感触などを示しています。
貫入状況
ロッドが沈んだときの状況を示しています。
土質分類
推定される土質の分類を示しています。
推定柱状図
推定される土質の分類を、それぞれに割り当てられたパターンで表しています。
換算N値
荷重Wsw(kN)と1m当りの半回転数(Nsw)を基に算出した地盤の硬さを示す指標となります。
換算N値の計算式は以下の通りです。
- 砂質土:N= 2Wsw+0.067Nsw
- 粘性土:N= 3Wsw+0.050Nsw
この数値が大きいほど硬い地盤となります。
支持力qa
N値と同様に地盤の硬さを示す指標となります。
支持力qaの計算式は以下の通りです。
- 砂質土:qa=8×N値
- 粘性土:qa=10×N値
この数値が大きいほど硬い地盤となります。
地盤調査報告書の確認ポイント
スクリューウエイト貫入試験の結果は、地盤調査報告書で確認できます。
地盤調査報告書のおもな確認ポイントについて、解説いたします。
自沈層と回転層
スクリューウエイト貫入試験は、おもりを載せたとき、あるいはハンドルを回転させたときのスクリューポイントがどの程度沈むのかといったことを調査します。
そして、おもりの荷重だけで沈んでいく地盤を「自沈層」と呼び、おもりだけでは沈まずハンドルを回転させることで貫入させる地盤を「回転層」と呼びます。
つまり、「自沈層」は弱い地盤であり、一方で「回転層」は強い地盤であると判断できるわけです。
地盤調査報告書の「荷重Wsw(kN)」と「1m当りの半回転数(Nsw)」の間にラインを引き、ラインを挟んで左側が「自沈層」、右側が「回転層」として見ることができます。
よって、ラインの右側でグラフが長く伸びているほど硬い地盤、ラインの左側でグラフが短くなるほど軟らかい地盤と判断できます。
また、自沈層において、何キロのおもりで沈んでいるのかという点もポイントのひとつです。
ちなみに日本建築学会の小規模建築物基礎設計では、地表面から2m以内に75kg以下の無回転自沈がある場合、5m以内に50kg以下の無回転自沈がある場合は、改良が必要であるとしています。
音・感触の表現
地盤調査報告書の「音・感触」の項目について、その表現によって貫入状態がわかります。
おもな表現は、以下の通りです。
上記の表現から、実際にロッドを貫入していた時の様子がわかります。
例えば、「ストン」や「スルスル」の地盤が続く場合は、強い地盤とはいえません。
また、貫入状況においても、「ガリガリ」や「ジャリジャリ」などの表現がされている場合は、礫など比較的強い地盤で形成されている場合が多くなります。
支持力qaの数値
支持力qaの数値は、建物の荷重を超えていない場合に改良の判定となるケースが多くなります。
建物の構造計算にもよりますが、木造2階建ての場合は20kN、木造3階建ての場合は30 kNが一般的な目安です。
まとめ
住宅の新築工事で行われる地盤調査は、「スクリューウエイト貫入試験」が主流となっています。
しかし、地盤調査報告書からもわかる通り、ロッドを貫入させるときの音や感触を根拠とするなど、施工者の裁量に左右されやすく、それほど精度が高い試験とはいえません。
そのため、安全を見て、地盤改良工事判定が多くなる傾向があるのです。
実際に、「スクリューウエイト貫入試験」と弊社が取り扱う「表面波探査法」では、その地盤改良工事判定の数に明らかな違いが見られます。
ちなみに、「スクリューウエイト貫入試験」では地盤改良工事判定が75%であることに対し、「表面波探査法」では12%と圧倒的な差が生じることがわかっています。
つまり、「表面波探査法」のほうが建設コストを大幅に削減できる可能性があるということです。
これから地盤調査を行う予定の方、あるいはすでに地盤調査を行い、その結果に納得がいかない方は、ぜひお気軽にご相談ください。