杭基礎や直接基礎とはなに?違いと特徴を徹底解説

杭基礎や直接基礎とはなに?違いと特徴を徹底解説

「直接基礎で問題ありませんよ」
「この土地は杭基礎が必要です」

建築前にこんな説明を受けたものの、一体何が違うの?どちらが良いの?と疑問を感じている方は少なくありません。基礎工法は住宅の土台となる重要な部分ですが、専門用語ばかりで初心者の方には理解しにくいですよね。

そこで今回は、京都を中心に関西一円で活動し、10,000件を超える地盤調査を手がけてきた私たちヤマト産業が、杭基礎と直接基礎の違いや特徴、それぞれのメリット・デメリット、さらに杭基礎が必要と言われた時のポイントまでわかりやすく解説します。

この記事を読み終える頃には、「なるほど、そういうことだったのか!」と基礎工法への理解が深まり、より良い住まいづくりの第一歩を踏み出せるはずです。

杭基礎と直接基礎の違いとは?

住宅を建てる際の基礎工法は、地盤の状態によって「杭基礎」「直接基礎」の2種類に分けられます。

基礎タイプ適用する地盤建物を支える仕組み
杭基礎軟弱地盤深い硬い地層まで杭で支える
直接基礎良好地盤地表面のコンクリート土台で支える

軟らかい地盤では建物の重さを支えきれないため、深い位置にある硬い地層まで杭を伸ばして建物を安定させる「杭基礎」が必要になります。

一方、表面の地盤が十分に硬い場合は、コンクリートの土台を直接地面に設置する「直接基礎」で住宅をしっかりと固定できるのです。

そもそも基礎は、建物の重量を適切に地盤へ伝えることにより、不同沈下を防止し、建物の安定化を図る役割があります。そのため、地盤の状態に合わせて適切な基礎をつくる必要があるのです。

※1つの住宅で杭基礎と直接基礎を併用することは、建築基準法により原則として禁止されています。異種基礎を併用すると不同沈下を起こしやすくなるためです。

杭基礎とはなに?

改めて「杭基礎」とは、軟弱な地盤に建物を建てる際に採用される基礎工法のことをいいます。

地表近くの土が柔らかくて建物の重量を十分に支えられない場合、地中深くにある硬い地層まで杭を打ち込んで建物を安定させます。

メリットデメリット
・地盤沈下や不同沈下による建物の傾きを防止する
・地震時の液状化現象や建物倒壊リスクを軽減する
・高層建築物や重量建築物にも対応できる
・支持層への到達で長期的な安全性を確保できる
・工事費用が80万~300万円ほど増加する
・杭の種類や深さにより費用が大きく変動する
・建築工期が1~2週間ほど延長する
・将来の建て替え時に撤去作業が必要になる
・杭自体が沈下するリスク(摩擦杭の場合)がある

また、杭基礎は建物を支える仕組みによって、大きく以下の2種類に分けられます。

  • 支持杭
  • 摩擦杭
  • これらは地盤の状況や建物の重さ、工事の予算などを考えて選択されます。では、支持杭から解説します。

    支持杭

    支持杭

    支持杭」とは、軟弱地盤の下にある硬い支持層まで杭を到達させて建物を支える工法です。

    各杭の先端部分で建物の重量を受け止める仕組みで、安定性の高い杭基礎になります。

    鋼管杭
    鋼管杭完成

    地盤調査で地中の様子を調べると、表面は軟らかくても深いところには岩盤のような硬い層があることがわかります。

    この硬い層(支持層)まで、杭の先端がしっかりと届いているかどうかが最も大切なポイントで、これにより建物の重さを受け止めることができるのです。

    施工中は杭の打ち込み状況を慎重にチェックし、設計通りの深度まで到達したことを確認する作業が重要になります。

    摩擦杭

    摩擦杭

    摩擦杭」とは、軟弱層が厚く、杭を支持層まで到達させることが難しい場合に、杭の周りの土との摩擦を利用して建物を支える杭基礎工法です。

    必ずしも硬い支持層まで到達させる必要はありませんが、杭の径を太くまたは長くすることで、土と接触する面積を増やし摩擦力を高めます。

    柱状改良
    柱状改良完成

    摩擦杭では、杭と土の摩擦力が建物の安全性を左右するため、詳しい地盤調査の結果をもとに最適な杭の寸法を決めることが不可欠になります。

    以上、杭基礎の2つのタイプについて解説しました。軟弱地盤に家を建てる際に心配になるのが地盤沈下の問題です。なお、地盤沈下に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。

    直接基礎とはなに?

    かわって「直接基礎」とは、地盤が十分に硬い場合に採用される基礎工法です。

    地表付近の土が建物の重量を受け止められる強度を持っている時は、フーチングと呼ばれるコンクリートの土台を直接地面に設置して建物を支えます。

    メリットデメリット
    ・工事費用を抑えて工期も短縮できる(杭工事不要)
    ・基礎工事がシンプルで施工管理しやすい
    ・基礎のために深く土を掘る必要が少ない
    ・良好な地盤でないと採用できない
    ・不同沈下のリスクを慎重に検討する必要がある
    ・支持力に限界があり重量建築物には難しい

    また、直接基礎には以下の通り大きく3つの種類があります。

  • 独立基礎
  • 布基礎
  • ベタ基礎
  • 杭基礎の場合と同様に、建物の構造や地盤の状況、工事の予算などを検討して選ばれます。では、独立基礎から解説していきます。

    独立基礎

    独立基礎

    独立基礎」とは、建物の柱の位置にのみ独立した土台を設けた基礎です。各柱を「点」で支える構造のため、少ない材料で建物の骨組みを支えることができます。

    かつては木造住宅で広く普及していましたが、現在の新築住宅では耐震性の観点から他の基礎方式(布基礎・ベタ基礎)を選ぶことが一般的になっています。

    その名の通り、各基礎が独立しているため、一箇所が沈下すると建物全体に影響を与える恐れがあります。

    布基礎

    布基礎

    布基礎」とは、建物の壁や柱の下を連続的につなぐように土台を設けた基礎のことです。逆T字型の断面形状で建物を「線」で支える構造のため、独立基礎と比べて地盤との接地面積が大きく、より安定した構造といえます。

    布基礎では基礎同士がつながっているため、もし一部の地盤が少し沈んでも、建物全体に与える影響を抑えることができます。

    ただし、床下からの湿気やシロアリ対策については、ベタ基礎よりも丁寧な施工が必要になります。

    ベタ基礎

    ベタ基礎
    ベタ基礎

    ベタ基礎」とは、建物の床下全面にコンクリートの土台を設けた基礎のことです。建物を「面」で支える構造のため、3つの直接基礎の中でも安定性と耐震性に優れています。

    現在の新築住宅では最も多く採用されていて、住宅品質の向上に大きく貢献しています。

    ベタ基礎では床下全体がコンクリートで覆われるため、建物の長期耐久性が良くなり、メンテナンスの手間も少なくなります。

    以上、直接基礎の3つのタイプをそれぞれ解説しました。

    杭基礎が必要と言われた時に知るべきこと

    住宅を建てる際に「この土地は杭基礎が必要です」と言われると、多くの方が驚かれます。「えっ、本当にそこまで必要なの?」「そんなにお金がかかるの?」など、様々な疑問や不安が浮かんでくるのでしょう。

    ここでは杭基礎の提案を受けた時に、知っておきたい基本的なポイントをわかりやすく解説します。

    なぜ杭基礎が必要なの?

    おさらいになりますが、杭基礎が必要になる理由は、地表付近の地盤が建物の重量を支える十分な強度を持たないためです。

    地盤調査の結果、軟弱地盤と判定された場合、そのまま建物を建てると、不同沈下や傾きといった深刻な問題が発生する恐れがあります。たとえば下記のような問題です。

    起こりうる問題具体的な影響
    建物全体が沈む基礎と地面に隙間ができ、玄関や窓の開け閉めの不具合、床と建具に段差が生じる
    建物が傾く室内の床が斜めになって、歩行が困難になり居住に支障をきたす
    ひび割れが生じる外壁や内壁、基礎にクラックが発生し、雨漏りや構造強度の低下を招く
    配管が破損する水道管やガス管が破損し、水漏れやガス漏れの危険が生じる

    こうした問題を防ぐために、硬い地層まで杭を打ち込んで建物をしっかりと固定する必要があるのです。

    杭基礎は決して建築会社が利益を上げるためのものではなく、あなたの住宅を長期間安全に保つための大切な工事と考えてください。

    費用はどのくらい高くなる?

    杭基礎になると建築費用は上がり、一般的な30坪程度の住宅では、80万円~300万円程度の追加費用がかかることが多いです。(あくまで目安です)

    現場によって杭基礎の費用が大きく変わる要因は下記の通りです。

    要因どんな時に高くなる?
    杭の本数建物が大きい
    杭の深さ硬い地層が深い位置にある
    杭の種類鋼管杭>コンクリート杭>柱状改良
    土地条件狭い、道路から遠い、高低差がある

    高額な費用になるケースもありますが、長期的に考えると必要な杭基礎はしっかりと施工しておく方が安心でしょう。

    本当に必要かどうか見極めるには?

    杭基礎の提案を受けた時は、本当に必要かどうかを見極めることも大切です。中には過度に安全を重視して、本来は不要な杭基礎を勧める建築会社もあるからです。

    もし不安に感じたら、地盤調査の専門会社にセカンドオピニオンの相談をしてみましょう。調査方法を変えることで、より正確な地盤の状態がわかり、直接基礎でも大丈夫なケースも実際に多いです。私たちヤマト産業でよければ、すぐに調査をお手伝いします。

    まとめ:安心の地盤調査で最適な基礎を

    杭基礎や直接基礎の違い、その他の疑問や不安は、今回の記事で少しでも解消できたでしょうか。ポイントは、あなたの土地の地盤がどれだけ建物を安全に支えられるかという点にあります。

    軟らかい地盤なら「杭基礎」で深く硬い地層まで建物を固定し、硬い地盤なら「直接基礎」で地表面のコンクリート土台でしっかりと支える。どちらも適切に施工されれば、長期間にわたって安心して住める家を実現できるでしょう。

    ただし、基礎工法を正しく選択するためには、地盤の状態を正確に把握することが何より重要です。曖昧な調査結果や不十分なデータでは、本来不要な杭基礎を提案されたり、逆に必要な杭基礎を見落とすリスクがあります。

    もしも現在の地盤調査の結果に疑問を感じているなら、セカンドオピニオンの調査を検討してみてください。

    当社ヤマト産業では「表面波探査法」という高精度な地盤調査を行っています。改良工事は一切行わず、地盤調査だけに専念する会社だからこそ、あなたの建物にとって本当に必要な基礎工法を中立的な立場で判断できます

    「杭基礎が必要と言われたけど、本当に必要なのか知りたい」「直接基礎で大丈夫と言われたが、将来が心配…」そんな不安をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

    正確な地盤調査に基づいて、家族全員が安心して暮らせる住まいを一緒に目指しましょう。

    なお、「表面波探査法」に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。

    スタッフ写真
    シロアリ駆除30年!ヤマト産業の社員たち
    中岡 亘由

    この記事を監修した人

    ヤマト産業取締役。シロアリ業界歴約30年。”コワモテ”だが、部下からは優しいと定評があります(笑)シロアリ駆除、防除、雨漏り防水のコトなら何でも聞いてください!

    更新情報

    About

    京都のシロアリ駆除・雨漏り防水工事専門業者ヤマト産業。寺社仏閣や大手会社の請負歴30年、1000件以上の実績。表面波による地盤調査では取り扱い件数No.1の実績があります。シロアリ駆除・雨漏り防水のほか、地盤調査、害虫・害獣駆除、断熱工事、その他リフォームもお任せ!京都・大阪・奈良エリア対応可。