ホウ酸は、シロアリ駆除に効くの?効かないの?安全性はどうなの?
検索すると、様々な関連記事が出ていて、実際のところどうなのか、わからなくなっていませんか?
結論として「ホウ酸」は、シロアリ駆除の薬剤として有効性が認められていますが、安全性と土壌への影響があることから、ヤマト産業ではおすすめしておりません。他のシロアリ薬剤と比べて、高い毒性があるので、効果があるのは確かです。しかし、3つの理由でリスクの方が大きいと私たちは考えています。
京都府宇治市に本拠地を置く株式会社ヤマト産業は、シロアリ駆除歴29年。京都の寺社仏閣や企業をはじめ年間3000件の施工実績をもつ、シロアリ駆除のプロフェッショナルです。
今回は、ヤマト産業の取締役中岡が、シロアリ駆除で使う「ホウ酸」の効果と注意点について、徹底解説いたします。
【目次】
Toggleそもそも「ホウ酸」とはなに?
ホウ酸は、化学的には硼砂(ほうそ、borax)とも呼ばれ、ホウ素と酸素から成る無機化合物です。ホウ酸は防腐剤、防虫剤、洗剤、殺虫剤、医薬品、火薬などの分野で使用されています。
形状は「ホウ酸塩鉱物」を精製してつくられた白色の粉末状。水に可溶性であるため、液体中で混合物として使用されることも多い薬品です。ゴキブリを駆除するホウ酸だんごはよく知られていますよね。医薬品としては、目薬やコンタクトレンズの保存液などでも使われることがあります。
シロアリ駆除では、ホウ酸だんごや薬剤散布、また木材への加圧注入処理などが代表的。いずれもシロアリが食べると、その消化器官に損傷を与えることで効果を発揮します。いわゆる「食毒」によって駆除する方法ですね。
ホウ酸は、私たちにとって比較的、身近な薬品であり、シロアリ駆除の薬剤としても一定の効果が期待できることは疑いようがありません。しかし、一方で、安全性やリスクを考えておくべきです。
ヤマト産業が「ホウ酸」を推奨しない3つの理由
ヤマト産業では、以下3つの理由で「ホウ酸」を推奨していません。
- 安全性に疑問が残る
ホウ酸は一般的に低毒性であり、人間やペットに対する危険性が低いとされますが、他のシロアリ薬剤と比べても毒性が強く、ホウ酸団子で中毒者が出たという報告もあります。 - 効果は限定的である
ホウ酸は水に溶ける性質なので水分の多いところに使用できません。しかしシロアリは湿度の高い環境を好み、風呂の壁の中やトイレの壁、玄関土中からの侵入が多いのです。 - 土壌処理できず、分解もされない
ホウ酸は一度散布してしまうと永久的に残存してしまいます。現在は安全とされていてもアスベストのように後から問題になるケースも考えられます。
とはいえ、ホウ酸はシロアリ駆除やゴキブリ対策で、現在も使われています。ヤマト産業では、施主さんの強い要望がない限り使用することはありませんが、他の業者様では使用するケースもあるでしょう。
すでにホウ酸によるシロアリ対策をしてしまった方、または、これから検討中の方に向けて、シロアリ駆除でホウ酸を使用する注意点について、解説いたします。
「ホウ酸」は安全性に疑問が残る
ホウ酸は、人間などの哺乳類に対しては安全でありながら、哺乳類以外には駆除効果を発揮するというのが利点のひとつでした。その根拠として、人間などの哺乳類が有する腎臓をシロアリなどの昆虫は持たないため、ホウ酸の毒性を排出できないというのです。仮に、人や犬猫などのペットが、ホウ酸を摂取したとしても、腎臓の働きにより短時間で排出されるため、ほとんど影響を受けないとされていました。
しかし、ホウ酸団子で中毒者が出たのも事実です。また、体外に排出するまでには短時間とは言い切れません。
ホウ酸は、消化管・粘膜・皮膚(開放創)から吸収され、そのうち50%は12時間以内に排泄されます。しかし、80% 以上が排泄されるには 5 日以上を要するそうです。特に腎尿細管上皮に対する細胞毒性と中枢神経抑制作用を持ち、致死量は乳児で 2~3 g、幼児で 5~6 g、成人で 15 g 以上とされています。
こうした危険性があるにも関わらず、製造メーカーは「家族の方も一緒に塗布してください」と安全性をアピールしていますので、事実をきちんと押さえておきましょう。
「ホウ酸」の効果は限定的である
ホウ酸は、水に溶けやすい性質を有していることから、水分の影響を受けると簡単に流れてしまい、効果は切れてしまいます。
そのため、雨に濡れやすい外部や湿気の多い床下などでの使用には適しません。つまり、ホウ酸の効果が期待できるのは、水分の影響を受けない環境であることが条件となるのです。
しかも、シロアリは多湿環境を好みます。実際に、シロアリが発生する場所で多いのが、風呂の壁の中やトイレの壁、玄関の土中。いずれも水分が多い場所です。日本の住宅は、湿気が生じやすいため、ホウ酸が利点とする「効果が長期間持続する」というのは極めて限定的であることがご理解いただけるのではないでしょうか。
「ホウ酸」は効果が現れるまで時間がかかる
さらに付け加えると、シロアリがホウ酸を食べても、すぐに効果は現れません。シロアリがホウ酸処理を施した木材を巣へ持ち帰り、それを仲間たちが摂取することで効果を発揮します。通常、数か月程度かかることが一般的です。
そのため、建物がシロアリの被害を受けた後も、効果を得るまでの間に拡大してしまうリスクがあります。この点は、どこまでシロアリの食害が進んでいるのか、しっかり調べたうえで判断しなくてはいけません。プロのシロアリ駆除業者でないとわからないところですので、個人判断は避けた方が無難でしょう。
「ホウ酸」だけでシロアリの侵入を防ぐことは難しい
何より、ホウ酸は、ネオニコチノイド系のような接触毒性やピレスロイド系のような忌避性を持っておらず、シロアリが食べることで初めて効果を発揮するものになります。ということは、シロアリがホウ酸を食べない限り、効果が出ることはありません。他の薬品に比べ、ドミノ効果が期待できないのです。
そのため、ホウ酸による木部処理やホウ酸だんごなどは、土壌から上がってくるシロアリの抜本的な対策とはなりにくいといえるでしょう。ホウ酸がまかれた場所にそうしたシロアリは、そもそも出会わないからです。
シロアリの根本的な対策として、最も効果が高いとされるのは、シロアリの侵入を防ぐ土壌処理です。土壌処理すれば、ホウ酸の期待できる効果が及ばないところへもアプローチが可能です。
なお、薬剤散布による施工に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
ホウ酸は、土壌処理できず、分解もされない
シロアリの根本的な対策として土壌処理が有効ですが、ホウ酸の場合、それができません。そして、一度散布してしまうと永久的に残存してしまいます。たとえば、新築の木材に散布すれば、ずっとその毒性が残ることになるのです。
メーカー側は、ホウ酸は匂いがなく、揮発蒸発もしないため、設置後も気になることがない、と説明するでしょう。また、シックハウス症候群や化学物質過敏症などを心配する必要がないので、比較的安全性は高いとされています。
でも、10年後もそうでしょうか?現在は安全とされていても、将来的にアスベストのように問題となるケースもゼロではありません。
こうしたことから、ヤマト産業では「ホウ酸」の使用については懐疑的で、シロアリ駆除の薬品として推奨していないのです。
ちなみに、シロアリ駆除で使用する薬剤のにおいや対策については、以下の記事を参考にしてください。
まとめ
シロアリ駆除で使う「ホウ酸」は、他の薬品と比べ毒性も強く、一定の効果があることは確かです。しかし、その効果も限定的であることや、安全性への疑問、永遠に分解されないことのリスクなど考えると、おすすめできる薬剤ではありません。
同時に、効果的にシロアリの駆除を行うには、施工業社選びがポイントとなります。「ホウ酸」の理解が浅いまま、使用している業者がいるのも事実ですし、メーカーはそもそも、リスクを強調しません。不安がある方は、信頼できる業者を探して、相談してみてください。
なお、ヤマト産業は京都のシロアリ駆除業者として30年余り営業しています。京都、大阪、奈良でシロアリ対策を検討している方は、どのような些細なことでもかまいません。遠慮なくお問い合わせください。