住宅建築の際、あらかじめ地盤調査を実施し、その結果から基礎の形を検討する必要があります。
地盤調査には、いくつかの方法がありますが、なかでも一般的に行われているのは「スクリューウエイト貫入試験」になります。
そして、「スクリューウエイト貫入試験」とはまったく異なる特徴を有し、弊社がおもに取り扱う方法が「表面波探査法」です。
では、これらの方法には具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
そこで今回は、地盤調査の方法である「表面波探査法」と「スクリューウエイト貫入試験」にはどのような違いがあるのか、徹底解説いたします。
【目次】
Toggle表面波探査法とスクリューウエイト貫入試験の調査方法
地震大国である日本において、地盤の状態は、安全な住宅づくりの重要なカギとなります。
なぜなら、住宅は地盤の上に建てるものであり、地盤が軟弱であれば建物の重さに耐えられず地盤沈下を起こす可能性があるためです。
とくに、傾きながら沈む不同沈下が生じると、構造部に偏った負荷がかかることによるダメージのほか、めまいや頭痛などの健康被害を受ける可能性があるため、十分に注意しなくてはなりません。
このような影響を避けるには、事前に地盤調査を行い、結果に基づいて基礎の形を検討することが重要になります。
地盤調査には多くの方法がありますが、代表的なものは以下の通りです。
- スクリューウエイト貫入試験(以下SWS試験)
- ボーリング調査
- 平板載荷試験
- 表面波探査法
なお、地盤調査に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
表面波探査法とは
表面波探査法とは、地面に揺れを与え、その揺れが伝わる速さにより地盤の硬軟を判断する方法であり、弊社でおもに取り扱う地盤調査となります。
この調査は、「支持力」と「沈下特性」を算出し、より精度の高い解析を行うことで、地盤の硬さを正確に判定できることがおもな特徴です。
そのため、地盤改良工事判定は非常に少なくなり、建築工事のトータルコストの削減につながります。
なお、表面波探査法に関する詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
スクリューウエイト貫入試験とは?
SWS試験とは、以前は「スウェ-デン式サウンディング試験」と呼ばれていたもので、2020年のJIS改定で現在の名称に変更されました。
この方法は、先端がキリ状になった鉄の棒(ロッド)を地盤へ突き刺し、その沈み方で地盤の硬さを調べます。
ロッドの先端に取り付けたスクリューポイントを地面に突き立て、おもりによる沈み込みやハンドルを回転させて25cm貫入するまでの回転数で硬軟を判断します。
しかし、SWS試験は、ボーリング調査のように土を採取して土質を調べる方法ではありません。
そのため、土質については、ロッドを貫入させるときの感触や音などを根拠として判定する必要があり、その正確性は施工業者や作業員に影響を受けやすい点は注意が必要です。
また、敷地の4隅と中央の5か所について、締まった支持層に到達するか深さ10m程度までの調査を行いますが、地中障害物が混入している場合などは追加の測定を行うこともあります。
他の地盤調査方法と比べても調査コストが安く、簡便であることなどがおもな特徴となります。
表面波探査法とスクリューウエイト貫入試験の違い
表面波探査法とSWS試験には、いくつかの異なる特徴があります。
おもな違いについて、簡単にご紹介いたします。
面と点の違い
表面波探査法とSWS試験の大きな違いといえば、「面」の調査であるか、あるいは「点」の調査であるかということです。
以下の図のように、表面波探査法が検出器を設置した範囲にある「面」の調査であることに対し、SWS試験は鉄の棒(ロッド)を差し込んで行う「点」の調査となります。
表面波探査法は、敷地内へ設置した起振機で小さな地震を人工的に発生させ、その表面波(振動)が地中でどのように伝わるのか2つの検出器でデータを検出して地盤の硬さを調べます。
検出器は、およそ1~1.5mの間隔で設置し、その範囲の波を計測する「面」の調査となります。
一方、SWS試験は、ロッドを貫入させ、ハンドルの回転数により地盤の硬さを調べる方法です。
ロッドは、その先端に直径わずか33mmのスクリューポイントを取り付けたものを貫入させる「点」の調査となります。
そのため、表面波探査法は建物の荷重を「面」で支えるベタ基礎と相性がよく、またSWS試験は建物の荷重を「点」で支える杭基礎との相性がよいとされています。
コストの違い
表面波探査法とSWS試験では、どちらを行うのかによってコストが変わります。
このコストは、「調査コスト」だけでなく、地盤改良工事を含めた「トータルコスト」の両面でチェックすることがポイントです。
まず「調査コスト」は、表面波探査法のほうが高く、SWS試験のほうが安くなります。
一方「トータルコスト」は、表面波探査法のほうが安く、SWS試験のほうが高い傾向にあります。
というのも、表面波探査法はSWS試験よりも精度の高い調査が可能となるためです。
精度の高い調査を実施すると、地盤改良工事は必要ないという判定が多くなり、その結果としてムダなコストを防げるようになります。
ちなみに、SWS試験では地盤改良工事判定が75%であることに対し、表面波探査法では12%と圧倒的な差が生じることがわかっています。
地盤改良工事が必要か必要ではないかという違いは、トータルコストに大きな差が生じることはいうまでもありません。
この点が表面波探査法とSWS試験の最も大きな違いです。
なぜ、このような差が生じるのかというと、まず「面」の調査と「点」の調査の違いにあります。
靴に例えると、表面波探査法はスニーカーで、SWS試験はハイヒールになります。
スニーカーで浜辺を歩いても沈みませんが、かかとが尖ったハイヒールで歩くと沈んでしまいます。
つまり、「面」の調査である表面波探査法は「点」の調査と比べて簡単に沈み込むことはなく、より正確な調査結果を得られることで、ムダな地盤改良工事も大幅に減らせるわけです。
また、表面波探査法は「支持力」と「沈下特性」の両方を算出しますが、SWS試験のほとんどは「沈下特性」の計算が行われません。
「沈下特性」とは、建物を建てたときにどの程度沈下する可能性があるかを示すもので、非常に重要な指標となります。
そのため、地耐力が不足していると判定されやすく、地盤改良工事も多くなってしまう傾向にあるのです。
表面波探査法は、「支持力」と「沈下特性」の両方を調査し、地盤改良工事判定を少なくすることでトータルコストを削減します。
まとめ
表面波探査法とSWS試験は、同じ地盤調査でも特徴が大きく異なります。
また、「面」と「点」で行う調査方法の違いにより、判定結果も変わることがあり、そうなるとトータルコストにも差が生じます。
表面波探査法は、地盤の硬さを正確に判定し、トータルコストの大幅な削減を実現できる方法です。
ヤマト産業では、表面波探査法を行っており、「地盤調査のセカンドオピニオン」としても対応しております。
納得できない地盤調査結果など、お問い合わせいただければ、改良判定が不要と判断される可能性を回答させていただきます。
これから地盤調査を行う予定の方、あるいはすでに地盤調査を行い、その結果に納得がいかない方は、ぜひお気軽にご相談ください。