木造住宅において、建物の断熱に関する関心が年々高まっています。それは建物を寒さから守り、結露による腐朽から建物を守るためにとても重要なことです。
しかし近年、内基礎断熱や外基礎断熱を採用した住宅でのシロアリ被害が勢いよく増加しているのをご存じでしょうか?
例えば、Google等の検索サイトで「基礎断熱」と検索すると、上位に「基礎断熱 シロアリ」とサジェストが表示されます。それほど基礎断熱とシロアリには重要なリスクがあることがわかります。
そこで、シロアリ駆除工事や年間100件以上の断熱工事の施工を行う弊社だからわかるシロアリに対する基礎断熱材の危険性とその対処方法を解説させていただきます。
【目次】
Toggleシロアリ被害がなぜ起こる?
断熱材はシロアリの好物
シロアリは主に木材に含まれるセルロースを栄養としますが、シロアリは雑食性の為木材だけではなく、プラスチックなども加害します。
その中でもスタイロ系断熱材は特に柔らかく、適切な温度が保たれている為、シロアリにとっては加害しやすい材料になります。
断熱材が、土壌に近い所に設置されることにより、シロアリに侵入されるケースが多くなります。
シロアリは革製品や繊維類、電線の被覆材、さらに金属やコンクリートまで加害することができます。
コンクリートの基礎でも侵入できる?
一般的に使用される基礎の一種である、「ベタ基礎」は、地面にコンクリートを流し込んで造られる基礎で、一見するとシロアリの侵入できる隙間はないように見えますが、シロアリは0.6mmの隙間を通過することができるため、立上りの基礎とベース基礎とのごくわずかな隙間から建物内に侵入することができます。
また、水道管を基礎内に入れるための穴や、玄関もシロアリが侵入しやすい場所となります。玄関のシロアリの侵入経路についてはシロアリ被害が玄関周辺で発生しやすい理由をご覧ください。
シロアリは小さな隙間や割れ目を通過する能力を持ち、家の中に侵入してしまうのです。
また、外基礎断熱工法ではコンクリート基礎の外に設置している断熱材が土の中に埋まることにより、シロアリの被害を受けやすくなります。
断熱材の中にシロアリが入ると、発見するのが難しく被害が拡大してしまうことがあります。
内基礎断熱の侵入経路
内基礎断熱は、基礎の内側の立上り部分や立上り周辺の基礎ベースに断熱材を設置します。
シロアリは、基礎のわずかな隙間から侵入し、基礎の内側に貼り付けられた断熱材を通過し、土台や床材などの木材を加害します。
図:内基礎断熱のシロアリが建物内に侵入するイメージ
写真:内基礎断熱から木材を加害したシロアリ
外基礎断熱の侵入経路
外基礎断熱は、基礎の外側に断熱材を設置する方法です。
断熱材が地中に埋まるため、断熱材にシロアリが侵入して、木材に被害を与えます。
外基礎断熱の場合、断熱材が基礎の仕上げ材に被覆されている為、シロアリがいることを発見するのが難しく、発見できた時には、被害が大きく進行していることが多いのも問題の一つです。
写真:加害にあった外基礎断熱の撤去写真
基礎断熱のシロアリに対する対処方法
現時点では、断熱材をシロアリの被害から100%予防することはできません。
しかし、以下の対処方法を行うことで、断熱材がシロアリの被害にあうリスクを低減することができます。
シロアリに強い断熱材を選ぶ
使用する断熱材の種類によってシロアリの程度は異なります。
一部の断熱材は、シロアリにとって加害しやすい成分が含まれている場合があります。これらの断熱材は、シロアリの被害を引き起こす可能性が高くなります。
適切なシロアリに対する耐性を持った断熱材を選ぶことが重要です。
断熱材の中でもグラスウール系やセルロースファイバーなどはシロアリに強い耐性を持ちますが、基礎断熱には柔らかい素材の断熱材は使い勝手が悪く、あまり使われません。
ほとんどの場合は強度のある、スタイロ系断熱材を使用します。
現在では、スタイロ系断熱材であっても、防蟻剤入りの断熱材のような、シロアリに被害されにくいもありますので、そちらのものを採用することも選択肢の一つになります。
防蟻剤入りの断熱材を選んだとしても、その効果は5年~10年のものが多く、それ以降にシロアリが発生するリスクが発生します。また、シロアリは断熱と基礎の間を通ることが多く、断熱材そのものに被害が無くても建物にシロアリの侵入を許す恐れがあります。
※スタイロ系の断熱材にも近年、防蟻剤入りの商品もあります。
適切な防蟻処理をする
シロアリの侵入するリスクを低減するために、防蟻処理は効果的な手段の一つです。
しかし、シロアリの侵入経路や生態を理解したうえで正しい防蟻処理を行わなければ、防蟻処理を行ったにもかかわらずシロアリの被害を受けることになります。
下記では、間違った防蟻処理と適切な防蟻処理について解説します。
間違った防蟻処理
通常の防蟻処理方法として床下の土間コンクリート上に薬剤を散布します。しかし、この方法ではシロアリの侵入経路に薬剤が散布されず、シロアリの侵入を許してしまいます。
※断熱材と基礎の間をシロアリが通過するため、基礎が仕上がった後の施工では防蟻効果がありません。
適切な防蟻処理
では、どのような防蟻処理であれば基礎断熱に対するシロアリの被害から建物を守れるのでしょうか?
下記で解説します。
基礎工事着工前の土壌薬剤散布
基礎ができる前に基礎下の土壌に適切に薬剤散布を行うことで、断熱材への進入を止めることができます。
しかし、薬剤の効果が切れてしまうと、シロアリが進入するリスクが高まります。
外周施工によるシロアリ予防工事
写真:建物外周の薬剤注入施工により穿孔を行ったコンクリート
基礎工事着工前に土壌処理を行った建物に再度シロアリ予防工事を行う場合は、建物外周に300mmピッチで穴をあけ、薬剤を注入していくトレンチング処理という工法があります。
この方法のデメリットとして、コンクリートに穴を開ける為、美観が損なわれるという点とガス管や水道管を破損してしまうリスクが生じます。
パイプ工法を採用する ※推奨
パイプ工法は、新築時に建物の周りにパイプを埋め込むことにより、建物外部に穴をあけることなく埋め込まれたパイプから薬剤を散布できます。
こちらのパイプ工法のメリットは、薬剤が切れる前に定期的にパイプに薬剤処理することができることです。
防蟻施工の際も、すでに埋め込まれたパイプを使うため、外部に穴をあける必要がなく、美観を損なうことなく、費用を抑えた形で長期的にメンテナンスができるということになります。
また、薬剤の注入を行うことで半永久的にシロアリに対する損害補償を付けることができるというメリットがあります。
定期的な点検とメンテナンス
シロアリの対策方法について解説させていただきましたが、現時点では100%シロアリを止めることは不可能です。
ただし、適切な防蟻対策をすることにより被害に対するリスクを最小限に抑えることは可能です。
また、リスクを抑えるためには、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
点検をシロアリ被害の早期発見をおこない、早期対策を行うことで長期にわたり安心してお住まい頂くことができます。
弊社ではシロアリに対する点検として、2年目・5年目・7年目・10年目と定期的に点検をすることをお勧めしています。それは人間の体と同じで、適切に家の状態を把握することにより、早期に改善点を発見することができ、被害を最小限に抑えることができること。将来的に必要なメメンテナンス費用の予定が組めることになります。
床下診断ではシロアリ以外にも配管の点検や基礎クラックの点検も行います。
まとめ
基礎断熱工法は優れた断熱効果があり、光熱費の削減やヒートショックによる健康被害を守るためにも有効な工法です。
しかし、シロアリや結露などの対策を講じることは非常に重要なポイントとなります。
今回はシロアリについて、侵入経路や対策方法について解説させていただきましたが、
お奨めは、定期的に薬剤による施工ができ、再施工を繰り返すことで保証が半永久的に付けられるパイプ工法です。
ヤマト産業では、30年に及ぶシロアリ工事の経験から基礎断熱による被害に対し、適切な対処方法を研究しています。
また、メンテナンスにおいても、実績を積んだプロのスタッフをそろえておりますので、お気軽にヤマト産業までご相談ください。